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ザ・元気人インタビュー 第3回 石黒 浩

桂米朝師匠、夏目漱石、マツコデラックスさんを模したアンドロイド(人型ロボット)などの生みの親である石黒浩教授に、アンドロイドが人と社会に与える影響の今とこれからについて聞いた。

― 落語家で人間国宝の桂米朝師匠のアンドロイドはどうして誕生したのですか。

 名人芸といわれていた師匠が、ご高齢になられて落語ができなくなった。その名人芸を再現するのが狙いでした。実際に再現してみると、みんなが引き込まれた。アンドロイドとわかっていても2、3分聞けば、その芸に引き込まれ、楽しんだのです。知名度の高い人が社会的に存在感を取り戻す点において、アンドロイドは意味のあるアーカイビングの技術とわかりました。

 3体のシリーズで、最初は僕のアンドロイド。私の存在感を2倍に拡張するものです。米朝師匠のアンドロイドは、失われた社会性をとり戻すもの。重要なのは、かつての米朝師匠を知っている人がたくさんいて、「あぁ、こういう人だった」とかつての米朝師匠を思い出すツールになっています。3つ目は夏目漱石のアンドロイドで、既に誰も会ったことがない完全に想像上の人物ですから、人の想像の中のイメージから存在感を創り出す新しいチャレンジでした。このシリーズは、存在感を2倍にする、存在感を取り戻す、存在感を創り出すというステップになっています。

― 人々の反応について聞かせてください。

 「アンドロイドとわかっていても触りにくい」「緊張する」と師匠のお弟子さんはじめ多くの人たちが言いました。とはいえ、本人ではないので、いかようにも扱われる危惧があるのです。米朝師匠のアンドロイドをどこで使うか、米朝事務所と常に相談しながら慎重に扱っています。どう残すかも大事な問題で、師匠の存在感を瞬間的にでも取り戻せたのはいいことですが、亡くなってからもずっと再現していいかという議論もあります。
 社会的に重要な人物で、その人の人格を大切に思っている人が多く、そういった人たちが残念だと思うことはできないわけで、それは最初からある問題ですが、現実にどう対応していくかを様々考えられるくらいに影響があったことが重要で、研究としておもしろいチャレンジでした。

 マツコデラックスさんのアンドロイドは僕と同じで、横に比べる対象がいる。厳密に比べるので、見た目だけでなくいろいろな動作を作っていくことで、やっと似ていると言われるようになります。米朝師匠のアンドロイドは若い頃の芸を再現しており、昔の人と比べる場合は、記憶は足りない情報はポジティブに補完する性質を持っているので美化され、余り似ていなくても似ていると言われます。夏目漱石は小説と私生活はまったく別で癇癪持ちだったとも言われています。しかし、酷いアンドロイドを再現すればいいかというとそれはないので、社会的に美化された存在感を再現するのが夏目漱石のアンドロイドです。

― 芸のアーカイブ、エンターテイメントの他、アンドロイドにはどんな可能性がありますか。

 ニュースキャスター、ウエザーリポート、お悩み相談、就職相談、受付などはアンドロイドができます。すでに僕が開発したアンドロイドル(アンドロイドとアイドルの造語)「U」はニコニコ生放送に出演し、深夜に2万人が見ています。遠い話ではありません。対話のソフトウェアも開発しています。
 悩み相談については、人は人に対して猜疑心を感じるので、ロボットの方が心を開きやすい。自閉症の子どもも人でなくロボットには喋れる。そういった研究もしています。

― 将来の職業が、AIやアンドロイドに取って代わられると言われています。

 その通りです。それは人類の歴史です。新しい技術が出てきて、どんどん置き換わっていく。昔はほとんど勉強しなくて仕事をしたのです。人生の8割9割が仕事だった。今、読み書きにパソコンを勉強し、学校生活はもちろん社会人になってからも学ぶことが多く人生の半分くらい勉強をしているのです。実質の仕事の量は減りました。
 ロボットやAIを少し勉強して、ものすごく生産性があがる時代になっているのです。あと50年すると日本の人口は半分になるので、仕事は半分でいいのです。加えて教育期間が伸びるので、そんなに仕事は要らないのです。
 コンピュータを使える人は足りていません。だからもっと勉強を、ということです。ただ、技術を学べる人間と学べない人間がおり、両者で社会ができている。トータルの生産性が落ちるのであれば何かしなくてはいけませんが、学べる人が学んでいけばトータルの生産性は落ちないので問題ありません。

― 大阪の今後について助言ください。

 大阪は、大学と産業界と研究所が上手くまとまっている。北九州はプレーヤがいない。東京には多すぎるし一カ所に集まらない。ロボット開発はたくさんの要素技術の集積なので一カ所にいろいろな技術が集約する場があることが重要なのです。
 いろいろな挑戦をするのは大阪が多い。しかしマーケットは残念なことに東京です。アイデアの種は大阪で、花開かせるのは東京でというのが現実的でしょう。
 大阪青年会議所には2代目3代目で家業を守る経営者も多いと聞きますが、チャレンジが必要です。家業であってもなくなるものはなくなる。コンピュータに置き換えられ、なくなってしまうものはあるのです。1人で悩むのでなくみんなで挑戦できる体制になれるがいいでしょう。

プロフィール

ロボット学者/大阪大学教授(特別教授)1963年生まれ。
大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。京都大学情報学研究科助教授,大阪大学工学研究科教授を経て,2009年より大阪大学基礎工学研究科教授。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。2007年、Synectics社(英)の調査「世界の100人の生きている天才のランキング」で日本人最高位の26位に選出される。2011年、大阪文化賞を受賞。2015年、文部科学大臣表彰を受賞。2013年より現職。主な著書は「アンドロイドは人間になれるか」(文春新書)、「ロボットとは何」(講談社現代新書) など。

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