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探訪・浪速の名匠 第5回 大阪フィルハーモニー交響楽団

大阪フィルハーモニー交響楽団
お話: 楽団事務局 吉田 芳さん

戦後の大阪に誕生し、長く市民に愛されてきた大阪フィルハーモニー交響楽団。7月には創立70周年のメモリアルイヤーを記念した特別公演、井上道義氏指揮によるバーンスタインの「ミサ」が大好評を博し話題となりま55年に渡り築き上げた大阪フィルの歴史と、新たな時を刻み始めた「これから」について伺いました。

戦後の大阪で、音楽を求め誕生した楽団

「大フィル」の象徴、故朝比奈隆氏

 大阪フィルハーモニー交響楽団(以下、大阪フィル)は今年創立70周年を迎えます。7月に開催した特別企画、バーンスタインの「ミサ」は、日本での公演が23年ぶりということもあり、フェスティバルホールの2500席が完売。関西のみならず全国のお客様にお越しいただきました。また、創設者である朝比奈隆の軌跡を大スクリーンで再現するスクリーンコンサートを開催。往年のファンはもちろん、若い方々にも当時の演奏を楽しんでいただきました。
 大阪フィルが誕生したのは、1947年。創設者の朝比奈は京都大学法学部に在籍していた頃、大学のオーケストラでバイオリン奏者としてロシア人のメッテル先生に師事、やがて指揮者に傾倒していきます。戦時中、満州に派遣されていた朝比奈は、引き揚げ後すぐに「朝比奈が帰ってきたら音楽をやろう」と待ち構えていた仲間たちと『関西交響楽団』を設立。これが、大阪フィルの前身となります。朝比奈はこの頃から人望があり、人を引っ張っていく力がありました。生まれながらのリーダーだったのでしょうね。

よく弾く、よく鳴るオーケストラ

広報担当の吉田芳さん

 大阪には4つの楽団がありますが、中でも大阪フィルは「よく弾く、よく鳴るオーケストラ」と言われます。本拠地のフェスティバルホールが2500席と大きく、しっかり弾かなければ3階席の後ろまで音が届かないんですね。ホールに鍛えられたことに加えて、朝比奈の響きへのこだわりがとても強かった。「もっと鳴らせ」が口癖でした。私は晩年しか知りませんが、「ホールの音が鳴りきった、大きく豊かな音に身を包まれたら感動しない訳がない」と言っていたことを覚えています。
客演指揮者の方々は「大阪フィルの演奏は朝比奈を感じる」とおっしゃいます。いまや朝比奈を知っている楽員は半分もいませんが、そんなふうに言われるのは、彼が築き上げた音楽が伝統として受け継がれているからではないでしょうか。大阪はお客様の雰囲気も個性的だそうで、外国人の演奏者からは「大阪は熱くて反応がいいね」と言われます。そんな「熱い」お客様と一緒だったからこそ、大阪フィルはこれまでやってこられたのだと思います。

七十年の伝統に刻まれる新たな個性

1947年4月の関西交響楽団(大フィルの前身)第一回演奏会(大阪朝日会館)

 大阪フィルは年10回の定期演奏会をはじめ、年間100を超える自主公演を行っています。最近は学校の課外授業やワークショップなどのご依頼も多く、大阪の文化振興を担う場面も増えてきました。毎年9月に御堂筋で繰り広げられる音楽イベント『大阪クラシック』は大植前音楽監督の発案で始めました。自分たちの好きな曲を自由に演奏できると毎年楽員も楽しみのようで、楽団の活性化につながっています。来年4月には、第3代音楽監督に尾高忠明が就任します。朝比奈隆に続く大植英次、井上道義という強い個性とはまた違う、尾高さんの誠実さが、大阪フィルにどのような変化を起こすか楽しみです。
札幌や仙台、横浜、広島、福岡など、大きな都市には必ずオーケストラがあります。いつでも、好きな時に、気軽に音楽にふれあえるというのは、私たちが生きる上でとても大事なことであり、幸せなことだと思うのです。クラシック音楽をあまり知らない方々にも、ぜひ演奏会に足を運んでいただいて、この幸せを味わってもらいたいですね。

朝比奈隆とはどんな人物だったのか。大阪フィルに42年間在籍するバイオリン奏者の橋本さんにお話をお聞きしました。
一人ひとりの音楽を、情熱で引き出す名指揮者。

第2バイオリン奏者  橋本安弘さん

 私が大阪フィルに入団したのは1975年、ちょうど初の欧州演奏旅行となるオーストリア・聖フローリアン修道院での演奏会の準備中でした。当時の朝比奈先生の気迫はすごかったですね。大理石造りの教会は音がよく響き、残響がとても長い。先生は普段もゆっくり指揮をされるのですが、この時はなおさらゆっくりしたテンポで、それが教会の音響に合ったのだと思います。この演奏会は第2楽章が終わった瞬間に教会の鐘が響いたことから「奇跡」と呼ばれ、大阪フィルを世界に知らしめるきっかけにもなりました。
朝比奈先生は93歳まで55年間に渡り指揮をされました。私が入団した頃はすでに60代でしたが、それを感じさせないくらい情熱的でしたね。身体全体を使って想いを伝え、うなるように声を絞り出す場面もありました。先生には「もっと弓を使って」とよく言われました。バイオリンは腕全体を使って弓を振らなければ音が響かないんですね。しっかり弾いているつもりでも「もっとがんばれ」と何度も言われました(笑)。

 不思議なことに、きちんと指揮をするのがいい指揮者というわけではなく、先生のように、ちょっとわからないくらいの方がいいこともあります。わからないと奏者の方で推察し、自分で音楽を作らなければない。楽員それぞれが考え、自分の音楽をつくらなければいい演奏は生まれません。それぞれの音楽を引き出し、集中して合わせることができるのがいい指揮者だと私は思います。
 私は来春で退団しますが、大植さん、井上さんと指揮者が変わっても、朝比奈先生が培ってきたものは引き継がれていると感じます。大阪フィルらしさ、朝比奈先生の「一生懸命に弾く音」そのものは、これからも変わらないのではないでしょうか。

大阪フィルハーモニー交響楽団
大阪市西成区岸里1-1-44
TEL: 06-6656-7701

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