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善が循環する
国際都市大阪の実現– 他に善かれかしの精神で世界を変える –

“破壊と創造の神シヴァ”古代インドに伝わる真逆の性質を併せ持つ神の名です。破壊と創造、これは一見すると矛盾する性質にも思えますが、大自然の営みはその連続に他なりません。私たちを支えるこの大自然が引き起こすひとつの現象が、人類にとっては災害という破壊の形であったとしても、地球をはじめ生きとし生けるものはすべてを受け止め、新たな創造を繰り返してきました。日本人は古来より、大自然の営みの中に八百万の神々を見出し信仰する中で、我が国特有の豊かな精神性を育んできました。あらゆる事象をまずは受け止め、すべては善きことと捉えるしなやかさもそのひとつです。ものごとが存在し得るということは、そこには目には見えない均衡と調和があります。森羅万象に調和と共存をもたらす働きによって私たちが生かされているように、他を自然と成り立たせようとする精神、それこそが“善”です。

はじめに

明治から大正という時代の変わり目に、大阪はいち早くイギリスで起こった第1次産業革命後の最先端技術を取り入れ、経済規模を急激に拡大させたことで「東洋のマンチェスター」とその名を世界に轟かせました。見知らぬものや異なる価値観を受け止める大阪ならではの大らかな気質が日本人の柔軟で勤勉な精神性に重なり、大阪を世界の大阪へと飛躍させたのです。

平成から新しい時代を迎えようとしている今日、データを支配するものがすべてを掌握するデータイズムの台頭とともに、AI、AR、VR、5G、ブロックチェーンといったテクノロジーによる第4次産業革命ともいうべき「デジタルエコノミー時代」が幕を開けようとしています。一方で、世界有数の課題先進都市ともいえる大阪は、超高齢化社会の到来や、貧困率の上昇、学力や自己肯定感の低下、そして災害に対する都市防災システムの脆弱性など様々な課題を抱えています。長きにわたる常識が覆されるほどの時代の変革期に生きる私たちは、目前に突き付けられたあらゆる変化を清濁併せ呑むがごとく受け止める柔軟な気質でこの変革期を乗り越えなくてはなりません。

また、世界では、個の権利の最大化を追い求めるナショナリズムが台頭し、批判的かつ排他的な民主主義が“是”とされるような風潮が蔓延しています。しかし、私たちは太平洋戦争の悲惨な経験から、個の限界と争いによる惨禍を充分に学んできました。境界線がないかのような新しい時代において、やみくもに境目を強調するのではなく、技術革新により驚くほど近くなった世界との距離を肌で感じ取り、東西二極としての大阪ではなく、アジアにおける大阪、世界における大阪として、個と個、都市と都市、地域と地域、国と国といったあらゆるレイヤーにおいて、他を自然と成り立たせようとする“善”が多層的につながり循環する国際都市大阪を実現しなければなりません。

未来を切り拓くチカラを
育もう

AIやロボットが世界中で本格的に普及し、人間に代わって多分野の労働を担うであろう近い将来、これまでの教育で育ってきた組織の中の画一的な一員であることの存在価値はどのようになっているでしょうか。未来を創造する人間として、感性と独創性を持ち合わせた「ひとり」であることの重要度が増していくことでしょう。そのような未来を生きていく子どもたちには、自らが経験を重ね、知識を得ることに加え、自分なりの解釈や発想を周りの人たちと連携を重ねながら磨き上げ、他も含めた大きな視野で行動するチカラが必要です。

私たち大人は、自らの固定概念の枠にはめて子どもたちの可能性を奪うのではなく、見知らぬ新たなものを好奇心で受け止め、臆せず自由闊達に挑戦することで経験と知識を積み重ねることができる環境を与え続けなければなりません。また、画一的な教育ではなく、一人ひとりの個性を見出し、自分らしさとそれらを互いに尊重し合い他を思いやる心を育んでやらなければなりません。さらに、自らの子だけではなく、他に善かれかしの精神で学びの機会の不平等と不公正を解消し、社会が一丸となって次世代を育む取り組みを推し進めていかなければなりません。

私たちは、あきらめることなく挑戦し続け、他を受け止めて慮りながらも自らの意見を発信し、未来への大きな夢と希望に満ちあふれた、未来を生きる子どもたちのチカラを、まずは大人が他に善かれかしの精神で社会一丸となって育み、互いが互いに成長の連鎖をもたらす、“善”が循環する国際都市大阪を実現します。

攻めと守りの国際都市大阪を
創り上げよう

2019年の日本初開催となるG20やラグビーワールドカップをはじめ、2021年にはワールドマスターズゲームズの開催、さらには日本再興の急先鋒ともいえる統合型リゾート開発など「大阪・関西」には、世界からことのほか大きな期待が寄せられています。一方で2018年6月の大阪北部地震や同年7月の西日本豪雨災害は、いつ起こるとも知れない南海トラフ大地震に対する都市災害対策の脆弱性に警鐘を鳴らしてくれました。日本、そして大阪は戦後アジアでいち早く復興を遂げ発展を果たしました。大阪は、成熟した都市ならではの貴重な機会を逃すことなく活用して成長につなげ、同時に様々な課題に正面から向き合うときを今まさに迎えています。その成長と解決のために必要なものは、大阪に関わるすべての人の揺るぎない意志と力強い行動力に他なりません。シニアも女性も若年層も、個人も組織も、一人ひとりが常に他に善かれかしの精神を胸に、まちや国、世界の未来を考え、課題の大小にかかわらずより良い大阪を創る主体者として、社会的な役割と責任を果たすことが求められているのです。そうすることで世界から注目されている大阪の魅力を発信する力は強くなり、人材や情報、資金が自然と集まり、有機的な連携が拡大され、大阪ブランドは徐々に確立されていくでしょう。

私たちは、大阪とその未来に対する当事者としての想いを発露させ、揺るぎない意志へと昇華させ、斬新なアイデアと未来志向の発想で世界と渡り合い、立場の違いを越えた他に善かれかしの精神で連携し、大阪の内外を巻き込み、“善”が循環する国際都市大阪を実現します。

多様な他を活かす
“善”を拡げよう

トランプ大統領によるナショナリズム政策の常態化、イギリスのEU離脱やEU諸国の財政破綻、難民問題、アジア諸国の台頭と国際情勢がますます複雑化する時代の到来は、ある意味ではグローバリズムの終焉の合図でもあり、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなっていくという最悪の事態を地球レベルで招いています。しかし自国の利益だけを優先すれば、その先には価値観の違いを理由にした国と国との陣取り合戦が待ち受けていることは人類の歴史から鑑みても明らかです。むしろ物理的にも情報的にも諸外国との距離が近くなった現代だからこそ、地球全体をひとつの集合体と捉え、この地球を世界の人びとと手と手を携えて次世代に引き継ぐという責務をあらためて認識しなければなりません。

そのために、日本人のアイデンティティでもある豊かな精神性で、それぞれの風土や伝統、文化や宗教などの多様な価値観を受け止め、他に善かれかしの精神をもって、共通の未来を想い描くことのできる関係性を築いていかなければなりません。大阪だけではなく、アジアや世界に視野を拡げ、知見にとどまらず人・モノ・金・情報などの成長エネルギーを外から大胆に取り込み、同時に内外にそのエネルギーを波及させ、共に豊かな未来を切り拓いていかなければなりません。

私たちは、多様性を寛容に受け止め、他を自然に成り立たせて自身の存在を生み出す“善”の精神と新たな価値を創造する使命感と情熱を備え、世界という大舞台でその力をいかんなく発揮し、誰ひとり取り残すことのない調和を生み出す世界市民を世界中に創り出し、“善”が循環する国際都市大阪を実現します。

“善”の循環の推力を担う
大阪青年会議所であり続けよう

“吾々はこの自から以て誇りとなす青年の意気と情熱を確信して、互いに団結し、相援け相いましめ、その知性の向上と将来に於ける指導力の養成に努める。”

およそ70年前、大阪青年会議所の設立趣意書にしたためられたこの一文は、普遍の輝きを放ち続け私たち青年のあるべき姿を示し、果敢に挑戦する勇気を与え続けてくれています。青年はいつの時代も時流をつかむ柔軟性と時代を動かすエネルギーを最大限に発揮しなければなりません。青年である私たちが持ち合わせているもの、それは、先人たちの血と汗によって長きにわたりあたかも縦糸と横糸のように織りなされてきた信頼と実績、その上に成り立つ縦横無尽に拡がるつながり、そして1000名を超える唯一無二のメンバー一人ひとり。これらを最大限かつ相乗的に活用してより大きく力強くし、他に見ることのないプロボノ集団として、社会から託された青年経済人としての責務を全力で果たさなければなりません。青年らしく情熱的かつ機動的に社会実験的な取り組みにも果敢に挑み、たとえそれがうまくいかなくても学びを得ることで次に活かすことができます。そして、まずは私たち自身が、挑戦し続ける揺るぎない意志と力強い行動力、さらには未来を拓く知性とリーダーシップを備えた人間となり、組織や大阪、地域や国の枠を越えてその輪を少しずつ大きくすることで、一人ひとりの心の奥底に宿る“善”を循環させる推力としての役割を果たし続けます。

“善”、それは森羅万象に調和と共存をもたらす秩序。

まずはたった一人、最も身近な人に対して他に善かれかしの精神で行動してみようではありませんか。
そして常に自らに問いかけようではありませんか。

私にとってどう善いのか?ではなく、
私たち、生きとし生けるものにとって、どう善いのか?

そして、
そこに“善”はあるのか?と。

一般社団法人 大阪青年会議所
第69代理事長小嶋 隆文