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The Sense of Wonder
from Osaka
徳の連鎖が世界を変える

私たちが住み暮らすこの世界は、沢山の驚きや、美しさで満ち溢れています。

感動や興奮、センス・オブ・ワンダーはそれを受け取る人の数だけ無数に存在しますが、そこには、社会、そして地球の過去からの営みが脈々と息づいています。その根底には、過去から紡がれてきたものに敬意を払い、大切な人を慮り、未来に想いを馳せる、当然のように大切にしてきた「徳」の意識が世代を超えて送り継がれてきました。

しかし、現在の社会において、テクノロジーの指数関数的な発展と共に物質的にも情報的にも豊かさは増す一方で、受動的な消費者として現状に満足し、自ら未来を考え、当事者として送り継がれてきたものを次の世代により良い形で託そうとする意思と力が乏しくなってきているのではないでしょうか。人びとが風評や同調圧力に流される中で、行き過ぎた資本主義は利己主義へと変わり、この素晴らしい世界の持続可能性が危ぶまれているのです。

私たちは、先人の予測を遥かに超えた変化の渦中にあるからこそ、過去から未来につながる時間的想像力と、取り巻くすべてのものと世界をつなげる空間的想像力を併せもった立体的な想像力を呼び覚まし、大切にしてきた精神性に改めて気付かなくてはなりません。そして、自らの頭で考え、為すべき役割を自覚し能動的に果たしていく信念を道標として、一人ひとりがその精神性を体現することができれば、多様な意見やニーズを巻き込んだ価値観の錬磨の中で新たな共感が起こり、より良い未来のための想いや行動が人から人へ、世代から世代へ伝播し、人の心を動かしてきた徳の精神を未来へ送り継ぐ力として、社会全体が一体となって進化するのです。

大阪から始まる徳の連鎖

私たちの住み暮らすまち大阪にも、時代によってあるべき姿を模索しながら発展を続け、大切な人やまちの未来のために有形無形の資産を想いと共につないできた歴史が存在します。かつての大阪万国博覧会のように、その時代の人びとの精神に原体験ともいえる未来への期待感を打ち込み、世界に様々な驚きや感動を提供してきたまちの力をより力強いものとして再生するためには、まちを織り成す270万人すべての人びとが確固たる信念のもとで想像力を働かせ、その一員としての誇りと役割を自覚しなければなりません。そして、まちの未来を自らと重ね合わせ、未知の領域に一歩踏み出す勇気をもって行動を響き合わせることでこそ「叡智を集め、未来社会のあるべき姿を発信し続ける大阪」として、託された役割と未来への責任を果たすことができるのです。

さらに、大阪が変わることは、これからの地球の未来においても大きな可能性を秘めています。大阪が変われば日本が変わり、日本が変われば世界が変わる。

私たちは、自らの手で世界を変える可能性を信じ、大阪から始まる徳の連鎖を世界につなぐまちを実現します。

地域と共に送り継ぐ子どもの未来

自己を構成する外的要素が選択肢として無数に存在する現在、これまで普通とされていた拠り所が失われ、次代を担う子どもたちのアイデンティティの確立が一層困難になりつつあります。子どもたちの、代替不可能な固有な存在であるという感覚を呼び覚まし、豊かな感情や思考力、表現力の基礎を培い、可能性をどこまでも描くことができるようにするためには、子どもたちを取り巻く親や周囲の大人が、世代間の交流により、かつて好奇心や想像力を刺激する感動に触れ自らを構成していった、時を超えて受け継がれてきた原体験を伝えていかなくてはなりません。また、社会全体で私事化の傾向が顕著になりつつある中、子どもたちの他者への思いやりや、生命や人権に対する意識の低下傾向が指摘されています。元来、始末の文化に表されるように、大阪に住み暮らす人びとのアイデンティティには、万物に感謝する想いが脈々と息づいています。このまちに生きる先人として、受け継がれてきた自然と文化、人と人とをつないできた想いを呼び覚まし、自らを支えるあらゆるものを認識し想いを巡らせる力を育んでいく未来への指針を、地域と共に示さなくてはなりません。私たちは、過去から紡がれてきた地域の一員としてのアイデンティティを確かな誇りと共に次代に伝え、彼らの成長の糧としながら他者への思いやりを育み、地域の絆と個人の成長を豊かな想像力と共に守り育てることで、世代を超えて地域の未来をつなぐ大阪を実現します。

まちの総力で発信する未来社会の姿

近年、大阪では、人口流入により、情報技術の進化と共に育った若い世代が増加しています。今後の日本の再生と成長の中心として大きなポテンシャルを持ちながらも、従来の社会構造の中ではその機会を有効に活かせていないのが現状です。彼らを含めたまちのすべての人びとの革新的な発想や可能性を最大限に引き出すためには、まちを構成し共に創りあげる一員としての自覚を抱き、自ら描いたビジョンに真摯に向き合い能動的に参画していく仕組みを、あらゆる団体の壁を越えて築き深めていかなければなりません。そして、2025大阪・関西万博を「地域と世界が交差する新しい万博」として、共創の連鎖を地球規模で拡大させていく起爆剤として世界に示すことでこそ、世界に先駆け、未来社会のあるべき姿を大阪から世界に発信することができるのです。また、テクノロジーの洗練、高度化によって引き起こされるシンギュラリティは、既に社会を変容させながら、様々な側面と共に私たちに挑戦を投げかけています。今後、更なる変化の加速が予測される中、先駆けてこの変革に向き合うことができなければ時代に取り残されることは必然です。今を生きる当事者である私たちは、既存の価値観と新たなテクノロジーが融和した新たな価値の創出とそれを受け止めるだけの精神的土台をまちに住み暮らす人びとが一体となって再認識しながら、次の時代に託してゆく責任を果たさねばなりません。私たちは、役割を自覚したあらゆる人びとが主体的に活躍し、培われてきた土台の上で新たな価値観が響き合い、万博を起点とした共創の連鎖を世界に拡げるための中核となって、垣根を超えた人びとを共感でつなぐ大阪を実現します。

勇気をもって踏み出す理想への挑戦

古くから商業の中心地として栄えてきた大阪には、まちと共に培われてきた素晴らしい技術や資源を持ちながらも、縮小する地域市場の中で先行きを見通すことが困難な企業が沢山存在します。世界に目を向ければ根強い需要が存在する中、海外との活発な交流が再開しつつある今こそ、私たちはアジアの中心都市として世界をリードし続ける持続的なビジネスを推進しなければなりません。国内外からのアクセスに恵まれ、国際的な拠点としてのポテンシャルを備えたこのまちだからこそ、あらゆる力を結集してこれまで紡がれてきた地域の魅力を世界に発信し、垣根を越えて新たな挑戦を後押しする環境をつくりだし、一歩踏み出す勇気を宿した人びとを羽ばたかせ、より良い形で次の世代に託すことができるのです。また、高い理想と共に設定された環境への目標は、コロナ禍を経て経済活動が再開された現在、見直しを余儀なくされています。悠久の過去から連綿と続いてきた自然の営みと、想いと共に紡がれてきた社会活動をどう交差させ次の世代へ継承し発展させていくのか、私たちは当事者として、これまで以上に明確な指針を示さなくてはなりません。ビジネスの傍ら、社会課題「も」解決する時代から、社会課題「を」解決することでビジネスを行い、拡大のチャンスへと変えていくことへと、更なる転換が求められているのです。私たちは、紡がれてきたまちの資源に確かな誇りを持ち、国境を越えた連携の中で新たな挑戦へと踏み出す勇気を持ち、次代に向けた持続的な共存発展へのビジョンを実現する起点として、現在の企業とあるべき未来をつなぐ大阪を実現します。

新たな価値を未来に送り継ぐ組織に

時代によって理想の社会像が変わるように、その実現のためのあるべきJC像も変わります。その中で、私たち自身が常に時代に合わせたアップデートを続けることができなければ、将来、有象無象の団体に埋もれかねない時代の転換期を迎えています。JCしかない時代から、JCもある時代を経て、JCでなければならない時代へと変化するため、大阪青年会議所はあらゆる団体の垣根を越えたハブとして想いを集め、未来へのビジョンに変えた発信源として、代替不可能な存在としてのアイデンティティを内外に示し続け、共感の輪を拡げていかなればなりません。それには、より良い未来を次代に送り継ぐ牽引者として、すべてのメンバーが青年経済人としての能力を余すことなく発揮できる環境を構築することが欠かせません。同調圧力や慣習に安易に倣うことなく、同じビジョンを目指す中で多様な視点と価値観が響き合う、多様性と包摂性をもった組織のもとでこそ、妥協を許さず仲間と共に想いをぶつけ合い、国境を越えた同志とのつながりによって互いのポテンシャルを最大化し、まちの、国の、世界の新たな価値創造に貢献し、組織が培ってきたつながりを未来に送り継ぐ起点となることができるのです。そして、理想に向けて共に走り続けた経験は、これから先、壮年期、老年期を迎える私たちのアイデンティティの一部となるかけがえのない体験となるでしょう。

私が世界から何かを受け取った記憶、原体験は、幼い頃の川遊びでした。

眼前一杯に無数に光る魚と、滝のせせらぎの音。
そこで味わった素晴らしい経験を、私は次の世代にも託したい。

驚きや感動は、感じる人の数だけ無限に存在します。
それこそが人の心を動かし、社会を変える原動力となるのです。

かけがえの無いこの地球の財産を、今を生きる我々の手で、次の世代へつなげていこう。

センス・オブ・ワンダーを未来へ送り継ぐために。

一般社団法人 大阪青年会議所
第74代理事長更家 一徳