特別対談 第1回 吉村洋文(大阪市長)× 岡部倫典(大阪青年会議所)

理事長 今日は貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございます。
 早速ですが、大阪青年会議所としては大阪のまちを元気にしていくために、様々なボランティアや下支えの活動をさせて頂いておりますが、2017年は改めて行政とタッグを組んで進めていけたらと考えております。
 大きくは「人作り」を始め、子供の教育格差という「貧困」にスポットをあて、一つでも多く貢献できる運動を実行していく考えです。さらに今年はビジネスに繋がる何かを構築し、例年と違うスタンスで活動を広げたいと思っておりますが、ここからは昨今の大阪について市長のご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。
 まずは、大阪のまちの現状(ポジショニング)についての市長のお考えや見解をお聞かせください。

市長 今大阪市は、非常に大事な分岐点に立たされていると感じています。戦前までの東京・大阪の二極から、戦後の東京一極集中へと進んだ結果、大阪で育った大きな企業がどんどん東京へ流れて行き、大阪の衰退が進みました。そこで大阪市としてもどうすれば大阪を復権させる事ができるかと考え、様々な策を打っているわけです。
 またその一方で、大阪の大阪らしい魅力がアジアの中でも再注目されて来ているにも関わらず、まだまだ大阪の本来持っている力が発揮されていないのが今の現状です。今ここでもう一度本来の力を取り戻す事ができれば、大阪が自立し成長していくスタイルを確立していけると確信しています。

理事長 それでは、IRの件や京都での文化庁の移転や民泊の条例が可決されている中、これからの展望を含め大阪の近未来についてはどうお考えでしょうか。

市長 まずは2025年の万博。これを大阪で行う。これは大阪の魅力を世界に発信する大きな起爆剤になると確信しています。
 そして総合型リゾートIR。大阪の夢洲にある甲子園球場100個分という広大な土地に、世界にもここしか無いというようなIRを作ることにより、雇用創出、税収増、地域の産業活性化など、大阪の経済発展が実現するはずです。きっとその頃には湾岸エリアの景色が大きく変わっていることでしょう。
 またその同時期に淀川左岸線という大阪湾岸エリアから梅北そして、門真から京都へ繋がる高速道路が整備拡大されれば、渋滞緩和と経済循環が高まるだろうと期待しています。大阪が大きく活性化していくチャンスです。
 さらに、北区の中之島には世界に誇れる近代美術館をつくり、IPS再生医療の本拠地を作るなど、中之島の開発においても国内外を問わず注目されるべく、今その種を撒いているところです。

理事長 そうすると、今後のインバウンドにおいても様々な期待ができると思うのですが、本来の大阪の魅力についてはどうお考えですか?

市長 僕は大阪が持つポテンシャルに注目しているんです。都は古くから関西にあり、その深い歴史が魅力なのは当然ながら、大阪から一時間もかからないアクセスで京都や奈良の歴史遺産や神戸の街並がある。これは世界中でも関西にしかない特色で、海外の方はその魅力を敏感に捉えて大阪を訪問されているのではないでしょうか。今年、インバウンドの人々が大阪を訪れる数はおそらく1000万人に届くでしょう。そのために必要不可欠な交通網においては、24時間稼働する関西空港にLCCを取り入れたことにより受け入れ体制を充実させました。それに加え、関空からなんば・梅北・新大阪・京都まで直通で行ける路線を計画して利便性の向上を図っています。
 また大阪独自の魅力を再認識する事も大切です。大阪人の中にあるサービス精神や、ちょっとお節介にも思えるおもてなしの心、そういうのが海外の方に受け入れられているという事実。 例えば、海外の方に「大阪観光でどんなことが一番感動しましたか?」とアンケートを取りましたところ「大阪の法被」が着れた事だとか、綺麗な折鶴を貰った事だといいます。これを見ても、日本にしかない魅力を形成し海外に発信できるポテンシャルが高いのは、大阪・関西だろうと思います。

理事長 私が掲げる一年間の方針の中にもありますが、改めて「ソフトパワー」と言うべく「人の力」という資産を活かしたいと考えております。市長も同じ様に「人の教育に力を入れる」と指針を出されていたかと思いますが、そのあたりもお聞かせください。

市長 これから誰もが経験したことのない少子高齢化となるでしょう。そんな中でどうやってこの国や大阪を豊かにしていくかと考えた時には、やはり「人の力」が「まちの力」になると思っています。
 国の経済を構築するのは、労働力と資本力と生産性。この中で労働力は減る一方でしょう。しかし将来、成長した子供はいずれ国の消費者となり、納税者、生産者となるのですから、子供たちの未来のためになる政策を実行していきたい!それが僕の方針です。
たとえば幼児教育の無償化をはじめ、所得格差が教育格差にならないよう、能力のある努力する子供はどんどん押し上げて行きたい。他の都市では見ないような子供の貧困対策をやっていきます。そうすることで循環型の社会を実現させ、子供が自分の可能性を追求していける強い社会を作っていけるのです。

理事長 私が教育に関してもう一つ注目したいのがスポーツなんです。たとえば、子供のオリンピックがあっても良いのかなと思ったり。心身を鍛えるという意味では学力だけではなく、精神性や礼節などスポーツを通して子供が学ぶものは非常に大きい。この点で市長のお考えをお聞かせ頂けませんか。

市長 僕自身も剣道やラグビーなどのスポーツを経験して、その大切さを身に染みて感じました。だから教育で最も重要なのは「生き抜く力」を育てることだと思っています。子供たちが成長していく中で、必ず色々な壁にぶち当たるでしょう。その時に自分の頭で考え、乗り越えて行く力があるか?そこが大切だと考えています。
 スポーツの持つ精神教育的な要素を念頭に、大阪市とサッカーのセレッソ大阪、野球のオリックスバッファローズ、バスケットの大阪エヴェッサの3スポーツと包括協定を結び、舞洲に拠点を置きました。小中学生のスポーツ教室の開催や学校へのコーチ派遣など、スポーツ振興充実のための政策に乗り出しました。第一線の選手とふれあうことでスポーツの素晴らしさを子供達に知ってもらうなど、スポーツを通じた教育を進めていきます。さらにパラリンピック「ボッチャ」のナショナル・センターも舞洲に拠点を置く運びとなりました。スポーツの素晴らしさを大阪全域に拡げていこうと思っています。

理事長 最後に、改めて私たち大阪青年会議所25才から40才までの青年経済人に対して期待されることをお聞かせください。

市長 まず、僕は41歳で、大阪市長としては若いねと言われますが、世界の首脳G7の7人の内3人が40代なんです。むしろ決して若くないという思いで立ち向かわなければならないと思ってますし、逆に40代が中心になって日本の政治経済を担っていかなければならないと感じています。さらに若き20~30代が経済を引っ張らないと大阪は良くならないですよ!とJCの皆さんに言いたい!
 イギリスのEU離脱、アメリカではトランプ氏が大統領に選ばれた今、きっと世界も大きく変化していくでしょう。どの国においても、臭いものに蓋をする事はやめて、社会の問題・課題を正面から捉えて突破して行こうという動きが求められているんだろうなと思います。
 大阪に置き換えてみれば、大阪府と大阪市を合わせて不幸せ(府市合わせ)とも言われる二重行政が続いていたこと。例えば、橋下前市長は知事もされていましたよね。では、橋下市長と橋下知事のどちらがトップですか?と聞かれて困るようなものですよ。今の私と松井知事は同じ価値観を持ちながら大阪の成長戦略を一体で進めていますが、これが一つでも行き違ってしまえば、あっと言う間に行政がストップしてしまいます。これが大阪にとっての本質的な問題。それを解決するために掲げた都構想、つまり大阪府と大阪市を一つにして強力な自治体を作って行くということが我々に課せられた使命じゃないのかなと考えています。この点においてもJCの若くたくましい経済人の皆様にご理解とご協力をいただきたいところですね。

理事長 それに関しては、都構想の住民投票を経験して改めて興味を持った若者が多かったのではないかと感じています。自分たちの住み暮らす大阪のために、何か考えて動かないといけないんじゃないかと思う人は確実に増えていると思いますよ。私達も微力ながらも色々な活動を通じて発信し続けていきたいと思っています。本日は本当にありがとうございました。

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