探訪・浪速の名匠 第1回 をぐら屋 大阪戎橋筋

第一回 をぐら屋 大阪戎橋筋
お話:八代目当主 池上時治郎社長(大阪青年会議所OB)

関西には名匠によってつくられた、素晴らしい銘品が数多くあります。
「探訪・浪速の名匠」では後世にまで語り継ぎたい、芸術品と呼ぶにふさわしい銘品をご紹介いたします。
第一回目は、浪速の昆布文化を築いたをぐら屋大阪戎橋筋の八代目当主、池上時治郎社長にお話をお聞きしました。

昔ながらの製法をかたくなに。

 創業者が昆布商の暖簾を揚げたのが嘉永元年(1848年)。
その後、四代目当主が戎橋筋に出店しました。現在に至るまで、屋号の「小倉屋」とブランド名の「をぐら昆布」を名乗ることができる暖簾分け制度をおこない、今では約40社を数えるにいたりました。
 「小倉屋」の昆布はさっぱり辛口。やわらかく昆布の旨みが凝縮されています。釜の大きさに限界があるため大量生産はできませんが、かたくなに昔ながらの製法を守り、直火で6時間もの時間をかけで煮いています。当店の代表的な商品でもある山椒のさわやかな香りが広がる「山椒昆布」は、大正から昭和にかけての大阪を舞台にした小説を残した織田作之助の名作「夫婦善哉」の一説に綴られています。「上等の昆布に山椒を入 れて煮詰めると、戎橋のをぐら屋で売っている山椒昆布と同じ位のうまさになる」とい う風に評されているのですよ。

昆布のおいしさを海外にも伝えたい。

 私は長い歴史のなかで先代の人たちが積み上げてきた味を守るために日々頑張っております。親子三代に渡ってご愛顧いただいているお客さまも多く、どんなに一生懸命取り組んでも、食文化は一瞬ではつくれませんからね。
 数年前から当店にも海外からの観光客が増え、現在その数は全体の2割程。一度も昆布を食べたことのない方も多く、その方々に商品のことをきちんとお伝えするために、店には中国語と英語が話せるスタッフが常駐しています。「夫婦善哉」に描かれている時代には予想もつかなかったことです。最近では販路を広げ、イギリス、シンガポール、香港などで販売を開始。国によってルールが異なるので一筋縄ではいきませんが、動かないとなにも始まりませんからね。
 八代目当主になって今年で8年。私の挑戦はまだはじまったばかりです。(談)

小倉屋大阪戎橋
大阪市中央区難波1-6-12
http://www.ogurakonbu.co.jp/

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