活動報告

第4回 本家 國重刃物店
お話: 八代目店主 水田裕隆さん
多種多様な店が軒を連ねる天神橋筋商店街で、ひときわ目を引く店舗があります。店先のショーウィンドウにありとあらゆる刃物が並ぶ「國重刃物店」です。天満の地に祖業しておよそ240年。江戸から明治、そして平成の世へ、時代の波に柔軟に対応しながら、刀鍛冶の技と高い品質を守り受け継ぐ八代目にお話を聞きました。
大塩平八郎が愛用した脇差に「國重」の銘

全ての包丁に「刀治 國重作」の銘刻が誇らかに刻まれる
先祖は代々備中の刀鍛冶で、今からおよそ240年前の江戸時代に天満に移り住みました。大阪にき刻まれた脇差が残っています。祖父の代までは刀を作っていましたが、明治維新の廃刀令の後は鋏や包丁といった打ち刃物を手掛けるようになりました。かつてこの界隈は繊維工場が多く、裁ち鋏や布裁包丁などがよく売れたそうです。私が幼い頃は傘屋や下駄屋など物を売る店が多かったのですが、近ごろは少なくなりました。代わりに人が住むようになり飲食店が増え、最近は家庭用の包丁や料理人向けの包丁が主流になっています。それでもまだこの辺りには華道の先生や能面師、仏師の方がいらっしゃるので、花鋏や彫刻刀などの需要も根強く残っています。
最近は海外からのお客様も多いですね。店先の展示を見て、ふらりと入って来られる方もいらっしゃいます。
日本人はよくドイツの刃物が切れると言いますが、「日本の刃物の方が切れるのに」とドイツの方が包丁を買って帰られます(笑)。
お客様のために、良く切れるように、長持ちするように

天神橋筋に向けて灯が燈る

研ぎ方で切れ味が変わって来る

奥様の紘(こう)子さんと
出刃や菜切り、刺身包丁といった和包丁はプロの料理人の方にも使っていただいていて、ミシュランに載るような京都の名店からもいらっしゃいます。「ここの包丁はいいよ」と外国人のシェフを連れてきてくださったこともありました。
家庭用の包丁も切れ味で選ぶなら、やはり昔ながらの鋼がおすすめですね。ただし、長く使うには手入れが大事。店には侮日、たくさんのお客様がメンテナンスに刃物を持ってこられます。包丁の研ぎはその方の好みがありますし、鋏なら「先を丸くして」など細かなご要望もある。
その一つひとつにお応えすること、お客様の刃物を良く切れるように、少しでも長持ちするようにすること。それが私たちの役目と思いながら、日々刃物に向き合っています。(談)

本家國重刃物店
大阪市北区天神橋3-2-36
TEL06-6351-7170
営業時間/10:00-19:00毎週火曜、第2・第4水曜定休