熱狂対談 吉村 洋文(大阪市長)× 竹田 哲之助(大阪青年会議所 理事長)

リスクを分散する「副首都大阪」構想

竹田理事長 - 今日は、これからの大阪について、市長のお考えをたくさんお伺いしたいと思います。 
 2018年、我々大阪青年会議所(以下JCI大阪)は、政策を立案・実行し、政治を動かすことで大阪および日本、ひいては世界をより良くすることを掲げていきたいと思います。そのための政策が次の3つになります。

  1. 日本再生を牽引する民間主導の
    経済成長の実現。
  2. 子どもの生きる力を育む生涯活躍
    社会の実現。
  3. 人類に真の進歩と調和をもたらす、
    突き抜けた人材育成。

 まずはこれらの3つの政策に基づいて、市長のお考えをお伺いしたいと思います。一つ目、私たちは東西二極の一極として大阪の役割は大きいと感じておりますが、その点を市長はどのようにお考えですか?

吉村市長 - まず認識すべきなのは、今の日本の構造はリスクを抱えているという点です。これまで国は、政治、経済、あらゆるものを東京に集中させてきました。でもよく考えれば大災害がいつ起きるか分からないのが日本という国です。
 東京に万一の事があった時には大阪、関西エリアが日本を引っ張って行かなければいけない。そのためにいま大阪府と掲げているのが、「副首都大阪」構想です。
 大阪はあらゆる面で高い水準を持っています。でも「ミニ東京」ではダメだと思うんです。大阪が個性を更に発揮して、日本を引っ張って行く都市にすること。それが日本の国益にとって必要なことだと思っています。

 

子どもに必要なのは「生き抜く力」

竹田 - 二つ目の政策、子どもたちを育む生涯活躍社会については、何が必要だと思われますか?

吉村 日本は産油国でも資源大国でもありません。では何がこの国の成長を支えているかと言えば、それは人です。人を支えるために大事なのは教育であり、教育を受けるのは子どもたち。日本および大阪の将来を活性化するためには、子どもたちに生きぬく力を身につけさせることが何よりも大事だと思っています。

大阪人に根付く「やってみなはれ」精神
 
竹田 -三つ目の人材育成についてもお伺いします。私達はイノベーションを起こせる突き抜けた人材育成のため、学生から30代までの社会人をターゲットにした事業を展開していくつもりです。大阪市も今、スタートアップ企業の支援をされていらっしゃいますね。

吉村 - 大阪は人材におけるイノベーションが生まれやすい土壌だと思っています。「やってみなはれ」という言葉が示す通り、元々大阪人にはチャレンジ精神が根付いています。結果、インスタントラーメンからIPS技術まで、数多くのイノベーションが大阪から生まれました。これがまさに大阪の強みであり、誇れる文化だと思うんですよね。だからこそ、それを最大限活かせるような仕組み作りが大事だと思っています。
竹田 -JCI大阪は今年、企業同士の更なるビジネスマッチングのための仕組みづくりにチャレンジしていくつもりです。

吉村 - 期待しています。

観光産業で大阪の魅力を発信する

竹田 -これから2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、大阪については、2025年の万博の誘致も本格化してきています。そんな中で、大阪が主導となって経済成長をしていくためのビジョンについてどのようにお考えですか?

吉村 - 経済面で急成長しているのは観光の分野です。観光インバウンドは非常に成長していて、5年前は200万人ほどでしたが、今は約5倍の1000万人を超えています。観光産業は単に宿泊や飲食だけでなく、製造やサービスなど様々な可能性がありますから、真っ先に伸ばしたい分野ですね。
 これについては大阪府と大阪市が一緒になって「大阪観光局」を作っておりまして、大阪の良さを世界に発信する拠点になっています。ですから、リピーター促進にもつながりますし、それが根付けば次は大阪に投資してみようか、という流れにもなると思います。こうした世界に向けての発信が大阪の経済成長の基軸になると思っています。
 それから、民間の活力を活かすために民間でできることは民間にやってもらう。そうすることでサービスもよくなりますし、役所にとっても税収が見込めるようになります。

竹田 -そこは規制緩和が必要になりますね。

吉村 - そのとおりです。例えば大阪城公園は管理を民間団体に任せ、利益を市に納めてもらっています。今まで経営管理にお金を使ってきた大阪市が、今では2億円以上の収入を得るまでになりました。このように民間にできることは民間に任せ、役所で丸がかえしないことが大阪の経済成長に繋がると考えています。
 あとはしっかりプラットフォームづくりをする。そこはやっぱり役所が行わないといけない部分もあると思います。要は大阪が儲かりそうだな、という空気を作っていくことですね。そのためには民間の活力を活かす土台の整理が必要だと思います。

 

大阪が持つ「健康医療」の強み

竹田 -JCI大阪では特に再生医療などに特化して、将来的に今の芽を繋げられる喚起をしたいと考えております。こちらについては市長のお考えはいかがでしょうか。

吉村 - まずは最先端医療を後援したサービスでインバウンドを呼び込む施策についてですが、現在、中之島の4丁目に新たに再生医療、未来医療の拠点を作ろうと考えています。
 阪大もそうですが、IPSの技術は関西がものすごく高い。そこでIPSの臨床試験をおこなって産業化につなげていく。そうしたハブのようなものを作っていこうと考えています。それによって健康寿命も伸びますし、インバウンドの需要についても分かってくる。大阪にはそういう強みがありますから、ぜひ促進していきたいですね。
 また、うめきたに関してはもう少し広い概念で「ライフデザインイノベーション」を提案しています。生活や健康、IPSやゲノム資料に特化したのが中之島4丁目ですが、うめきたではいかに豊かに生活するかとか、そのためのサービスや技術、あるいはスポーツを通じて産業を生み出すといった新たなイノベーションがコンセプトになります。
 それぞれの役割を担ったうめきたや中之島を連動させながら、2025年の万博誘致を目指すことになります。ですから、大阪の持っている健康医療の強みを更に引き延ばすことが大阪の成長ビジョンに繋がると思っています。

万博の開催が生む、大きな経済遺産

竹田 -最後になりますが、JCI大阪は万博誘致にもしっかりコミットしたいと思っています。そこでJCI大阪に対して『もっとこんなことをやって欲しい』といった要望があればぜひ聞かせてください。

吉村 - 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、その次は2025年の大阪万博を実現したい。先程から申し上げている大阪の強み、日本が持っている強み。それを世界に発信できるのはまさにこの機会だと思っています。
 万博を実現すれば2兆円の経済効果があると言われています。大阪市のGDPが20兆円で大阪全域が40兆円ですから、2兆円というのはものすごく大きな経済効果です。さらには経済効果だけでなく、新たなサービスや産業、技術が生まれることで、そのあともずっと続く大きな経済の遺産が残る。
 だからテーマも、命、科学、社会のデザインを通じて人に焦点を当てています。珍しい物を見せるための万博ではなく、人に焦点を当てることで新たな産業が生まれ、それによってみなが豊かに暮らせる社会をつくる。生まれてから死ぬまで健康で豊かに暮らすにはどうしたらいいかを追求することで、生活が一変する。そんな万博を実現したいと思っています。
 万博の実現はまさに産業界、経済界が中心になります。海外企業と国へのアプローチ。私たちはこの二軸を中心にやっていきたいと思いますので、JCI大阪の皆さんにも是非応援してもらいたいと思っています。

竹田 -ありがとうございます。JCI大阪にしかできない支援をしっかりとさせていただきますので、ぜひ連携しながら進めさせていければと思います。それでは一年間、どうぞよろしくお願いいたします。

吉村 - こちらこそよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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