WHAT’S JCI OSAKA

一般社団法人大阪青年会議所2020年代運動方針

はじめに

戦後間もない1950年3月25日、祖国のあやまりなき再建と世界平和の実現という崇高な目的を掲げ設立された大阪青年会議所。
それから70年、先人の弛まぬ努力のもと、日本は奇跡的な経済復興を遂げ、世界をみてもこれまでにない安定した社会を形成してきた。
戦争の影響を色濃く受け、戦後復興という共通の目的のもと社会全体が一丸となって駆け抜けた『昭和』、そして、情報伝達技術の急速な発展により、人びとの生活が劇的に変化を遂げた『平成』の時代が終わりを告げ、将来予測が極めて困難な『令和』の時代が幕を開けたのである。
2010年代、『公』『敬』『創』という普遍の価値観を心のよりどころとして青年らしく誇りと自信をもって行動することで地域に根差した社会開発活動の中核的役割を担ってきた私たち大阪青年会議所は、2020年代という先行き不透明な混沌が世界を支配する時代を、先人たちが生み出したシステムや価値観にしばられることなく、自ら未来を創る覚悟で新たなうねりを生み出し、希望の発信源として自らが住み暮らす大阪のまちの社会と経済の両輪での持続的成長に寄与していかなければならない。

―自然への敬意と畏怖―

有史以来、日本人は、自然を抗うことのできない崇高な存在として認識し、畏敬の念をもっていかに自然と調和した社会を形成していくのかを追求してきました。
昨今、地球環境の変化に伴い自然災害が世界中で猛威を振るい、また人びとの生命を脅かす感染症が世界の状況を根底から覆しています。
人類がこれらの課題を乗り越えるためには、自然の状態をありのまま受け入れ、人を自然のなかに内包化される存在として捉え直す必要があるのです。

―資本主義社会の終焉―

資本主義は、生産手段の私的所有および経済的な利益追求行為を標榜し、自由競争市場のもと自己完結的な社会経済システムとして社会全体を成熟させてきました。
しかしながら、世界を席巻してきた資本主義経済もあらゆる局面でほころびを露呈しており、資源枯渇、環境破壊、食糧の不足がまさに世界各地で顕在化し、万能と考えられてきた地球がもはや子どもの世代まで存続するかどうか危ぶまれています。
そして、このような社会背景のもと、これまでの自らの暮らしを豊かにするための短期的かつ個人的な利益を追求という自身が生きる現在という時間軸でものごとを捉えていく考え方から、未来という新たな基軸を内包した持続的かつ社会的な利益を生み出すことで社会全体が最適化していくという考えが浸透し始めています。
これからの社会においては、企業のみならず、国家、行政、市民を含めたあらゆるステークホルダーが公に資する想いのもと時空を超えた持続的発展可能性を根底に据えて取り組むことが求められているのです。

―人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ。
梅の花のように、日本人が明日への希望を咲かせる国でありますように。―

新たな元号、「令和」に込められた想いを体現していくのは、これからの時代を生きる私たちであり、混沌とした時代においても、変わらず輝き続けるのは人びとが有する明日への希望です。
今の時代を生きる私たちが互いを響き合わせ、点を線そして面へと発展させることで持続可能な社会の実現につながるといえます。
共に生き、共に感じ、共に創りあげていくことこそが未来を形成する核心として必要不可欠なのです。
よって、現在まで創始の想いを受け継ぎ、大阪そして日本の時代を切り拓いてきた大阪青年会議所は、予測が困難な時代を迎えた今こそ、未来にむけて新たな社会モデルを構築する先駆者とならなければなりません。

持続的価値創造都市に向けて

-「共生」「共感」「共創」から生まれる持続的価値-

持続的価値創造都市とは、単に人口や経済規模が大きい都市ではなく、明確なビジョンのもと他都市に先駆けて持続可能な新たな価値を創出するリーダーとしての自覚を有する都市です。
これからの時代において、大阪が持続的価値を創造する都市として世界に新たな社会モデルを発信するためには、「共生」、「共感」、「共創」を掲げて未来に繋がる新たな価値を生み出すことで、環境保全と経済発展が好循環する都市のビジョン形成に取り組むことが必要不可欠です。

『共生』

有史以来、人類は幾多の自然の脅威に晒されながらもこれを乗り越え社会を発展させてきたことに異論はありません。世界レベルで生じている数々の危機に直面している我々が新たな時代を切り拓くためには、今一度人類が手を取り合って人類の叡智を結集しすべてを受け入れる覚悟をもって一体化を模索していく新たなフェーズに突入しています。人々の生活様式が根底から覆り、先行きが不透明な局面を迎えた私たちが更なる幸福感や満足感を得るためには、人類の連帯のもと自然と共生した未来をデザインする必要があります。

『共感』

近代以降の個人は、情報の偏在という社会背景のもと、国家という一種のコミュニティへの強固な帰属意識をアイデンティティとする特性がありました。しかしながら、情報伝達技術の発達により情報の壁が取り払われ、更にコミュニケーションツールとしてのインターフェースの発達により一方的な情報伝達から個人と個人の直接的な交流及び体験の三次元化へと進化しています。人びとが多様な思想や考えに触れることにより様々な共感が生み出されているのです。コミュニティが共同幻想により形成されることに鑑みると、コミュニティは共感の出現とともに多様化します。私たちが人びとを巻き込んだまちづくりに取組むには、個人が共感により創出されるコミュニティを選択すること、すなわち、アイデンティティの多様性を活かす社会形成が不可欠です。

『共創』

様々な要素が絡み合いこれまでにないほど複雑化した社会構造を抱えるこれからの時代、まちが有するすべてのリソースを結集し行動することが新たな未来を切り拓く重要なポイントとなります。明日のことすら予測ができず未来を想像することが極めて困難ないま、国家、行政、企業、個人を問わず止まることはそれだけでリスクといえます。既存の価値観や常識という固定観念にとらわれず行動し秘められた無限の可能性を現実に昇華することで、大胆に自らの領域を超える新たなイノベーションを創出することができるのです。まちに存在する様々なアイデンティティの行動から生まれる個性溢れる新たな価値がその輝きを維持したまま融合していくことが未来を切り拓いていく唯一の手段といえます。

持続的な価値を創造する組織であるために

時代が移り変わり、社会を構成する様々な要素が変化したとしても、変わらぬ普遍的な事実は、時代を創り世の中を変えていくのは、自らを以て誇りとなす意気と情熱に溢れた青年の行動です。大阪青年会議所が未来形成に必須の組織であり続けるため、私たちは、行政、企業、民間団体、個人というまちを構成するすべてが共に手を取り協働することによって、これから始まる激動の変化に柔軟に対応していくことが求められています。
私たちは、どのような時代においても日々の研鑽を怠ることなく弛まぬ努力を積み重ねることで、自らそして組織をアップデートし、大阪、日本、ひいては世界に強烈なインパクトを与え続ける中核的な存在としての地位を確立していきます。